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<講演会禄>

  先日、4月23日(金)に「支えること・支えられること」と題して、村瀬嘉代子先生(大正大学人間学部・大学院教授 日本臨床心理士会被害者支援専門委員会委員長)の講話がありました。
  終始、優しい声で、トツトツと・・また力強いひびきで耳に飛び込んできました。
  心理的援助の基盤とその展開としての説明がありました。まず現実ありき、理論や技法があって現実があるのではない、何を、どこから、いかに、という発想、原則をしって個別化をしてゆこうというものでした。また、傾聴、身を添わせるということについても手ほどきがありました・・・。「寄り添う」とは、身体の位置関係を示す言葉です。「共にいる」と感じることができる相談者と 受け手の位置関係を感覚として把えることが大切です。以下、犯罪被害者支援ハンドブックに掲載されていたものです。さあ、今、あなたは どうされてましたか・・。

被害者等の心の傷を深めないために 役に立つ言葉

     役に立つ言葉
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● 本当にお気の毒です。
● どうしたらあなたの役に立てますか。
● このことはあなたにとって大変つらいことだと思います。
● その人についてもっと話をしてください。
● 怒ったり、悲しんだりしていいのですよ。
● 今までと同じように仕事や家事ができなくて当たり前です。
● 何かをする気力がなくて当然です。
● 無理にがんばる必要はありません。
● 自分の感情を素直に出していいのですよ。
● 本当につらいことは、一生忘れられなくて当たりまえです。
● よくがんばってきましたね。
 
言ってはいけない言葉
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● 強くなって、前向きに生きていかなければなりません。
● ほかにも同じような人はいますよ。あなただけじゃない。
● どんなに嘆き悲しんでも、愛する人は戻って来ないのですよ。
● 泣かないでください。泣いてばかりいると、その人は成仏できません。
● あなたの苦しみや悲しみはよく理解できます。
● 早く元気になって、がんばってください。
● 元気にならないと、亡くなった方が成仏できませんよ。
● 時間がすべてを解決してくれます。
● つらいことは早く忘れるようにしましょう。
● ほかにも子供がいることを感謝しなければ。
● 命が助かっただけでもよかったと思わなければ。
● これぐらいですんでよかった。もっとひどい被害にあった人もいる。
● 大丈夫、よくなりますよ。
● しっかりしているから大丈夫。私だったら気が狂ってしまう。
● こうすればよかったのに。

 

<まめ知識>

PTSDとベトナム戦争

 PTSDはベトナム戦争帰還兵に多発した精神障害です。悪夢を見たり、引きこもってしまったり、抑うつ的になって社会生活が営めなくなった人たちが、ベトナム戦争帰還兵の中にたくさん出たのです。PTSDに関して研究が進む中で、ベトナム戦争帰還兵と同じように犯罪被害者にも事件を契機とした外傷体験が後遺症として残り、同じような症状が出るということが分かり、PTSDに対する治療法、援助法が確立されていきました。
 戦争というのは歴史上あちこちにたくさんあるのに、なぜベトナム戦争のときだけPTSDが多発したのかということですが、その理由としては、DEROS systemという、この戦争で新たに取り入れられた帰還制度だったという説があります。
 それまでの戦争では、戦場から退避するときの行動は部隊ごとに行うことに決まっていたのに対し、DEROS systemではそれが全くできなくなってしまったことにマイナスの影響があったのではないかというのです。
 私がこの説に共感を感じますのは、犯罪被害者、特に性犯罪被害者や殺人事件の遺族というのは本当に孤立していて、傷を癒す場所がほとんどなくなっているのではないかと思うからです。孤立して苦しめられる期間が長ければ長いほど後遺症も長く続くことになります。

(被害者支援センターかがわ設立記念山上皓氏講演会講演禄から抜粋)