ただ一つ願うならば 矢川珠貴
血の繋がりというものが
血の鎖ではなく
豊かな枯葉を支える根のように
あたたかな生命の流れであるために
ただその為だけに、一つだけ願うとするならば。
お願いです――私を愛して下さい。
家族の絆というものが
一つところに打付ける楔ではなく
光る小石のように
一玉の毛糸のように
帰路の導であるために
ただその為だけに、一つだけ願うとするならば。
お願いです――私に愛させて下さい。
私の命を慈しむために、ただ一つだけ願うとするならば。
お願いです――私を愛して下さい。
お願いです、私に愛させて下さい。
どうか、――憎しみも歪もない愛を。
微笑みを伴う愛を、ただ交わしたいだけなのです
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