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「ポーの一族」  萩尾望都著、小学館文庫

 帰省した娘と連れ立って本屋に入る。コミック棚にむかう・・・たまたま手にしてみたコミックマンガ・・・表示が魅力的でひかれたのです。ハギオモト・・一応知っている作者だ。(若い頃はマンガには余り興味がもてず老いたもので)それを傍らで見ていた娘の「その本おもしろいよ・・」の一言で3冊買い求め、夏の休みをかけながら読破した。(やっとですが!)一言でおもしろかった。作者は私と同じ年代あたりの方なのだ。いろんな作品を残している。1960年〜1970年代を生きた我々にとって作者と共感した所がある。どうしても60〜70年代というのは世の流れの分岐点だし、今の時代の端渡しの期でもある。アルコール医療に携わる中でも考えさせられた。人が生きるということは、一体どういったことなのか?とか・・・。
  そのような時代を反映して、この作品も存在したのか。今の時代にも版を重ねず〜っとひそかなブームを保持していると聞いた。この本のテーマとしては「時を越えて生きる、はるかなる一族」と本の帯に記されているが、長い時を生きるポーの一族。その悲しみはわれわれの悲しみと、どれだけ違うのだろうか・・・というものである。
  ストーリーとしては、パンパネラ(つまりドラキュラのこと)が十字架をきらい人の血を求め時を止めた中で生きてゆく為の苦労話である。死に至れない辛さ、年を重ねられない儚が描かれている。人は一人では生きてゆけない。人は社会の中で、人とのかかわりあいの中で生きてゆく。このストーリーの中の主人公、準主人公であるエドガー、アラン、メリーベルは皆美しいし、年をとらない・・永遠に14歳の少年少女のままである。彼らは人間社会の中に、やすらぐところは見出さられない。友達もつくれない。人を愛することもままならない。誰とも、何ともかかわりない。それは寂しいことであろうか・・想像を絶する。主人公達はそんな場の中で、無邪気な笑顔を見せることがあるが、それは、ほんとうの孤独を知る者だけが見せる、不気味な笑みでもあるようだ。このコミックマンガの世界に感情移入できるのは、自分の中に、彼らの寂しさに通じるものがあったから、最后まで読めたのか・・・!
  今この時を生きにくく感じとっている者にも相通じるところがあるのではないかしら・・・とフト思ったりもした。人はほんとうにたった一人で社会の中に人の中に彷徨っている。
  だからこそ、かかわりをもちたい・・・かかわりたいと思うのではないか。いろんなことをおもい巡らせてみた。
  また秋の夜長、ボチボチと読むのもよし・・・ (ここんところコミック誌を読みすぎている・・
 専門誌の方がどうも・・!? でもよくできている内容でした。)

G記