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「ドールハウス」  著 :姫野カオルコ 出版:角川文庫  \480

 「家とは何か?」を問いかけていたテーマが流れていた。高速バスの中で一読した。私の生きている世界観とはまるで違っているのです。
  主人公は理加子という。彼女は未熟な29歳で処女である。(いわゆる少女と言いかえる方がよいかも・・・)彼女は一人っ子として存在している。本の内容としては両親が娘を家の後継者として育てている風景が描写されている。日本の家制度は、つぐ者は「個」「家」を優先しいゆくのをヨシとしていた。近代になり、次第に「家」より「個」を優勢させ始めたが、それが本当に定着しているのか? 今(1989年の作)この時代、主人公、理加子は、このことでひどく悩んでいる。 「個」を優先させることが「家」をないがしろにしていると錯覚している。又、「家」を優先させることが、決して「個」をしばるということでもない。両者は対立するものではなく、向き合える距離が必要なのかも・・・・つまり他者を受容するには、自己がまず確立(・・)されていなければならない。「個」を殺したまま生きている主人公は・・・弱く、だから未熟なのだ。一方で恋愛物語とも把えられるが、主人公は恋愛をしようとしたが・・・恋愛ができるハズがない。恋愛は「個」と「個」が格闘することで進んでいくのだから・・・。 暑い、夏休みのあい間で読んでみて下さい。   (G記)