算盤 (os)

子供の頃そろばんを所有していた記憶がかすかにありますが、そろばんを計算に使った記憶はありません。「読み書き算盤」の文化的伝統を感受するための教材遊具として学校指示で購入したのだと思います。九九の呪文は、たぶん今も覚えています。九九は81の短い歌であり、喉口筋肉のダンスです。私は九九81種全て覚えてなくて前後反転すれば同じ結果のものは片方しか覚えていません。子供時代に習得した呪文は老人になっても忘れないものです。しかし今は、九九を使いません。筆算もしません。筆算方法を忘れてしまっていても困りません。九九が覚束なくなっても問題ありません。試しに、簡単な計算問題を利口なAIスピーカーに問いかけると親切に答えを教えてくれます。

電卓も使いません。電卓は簡素な(CPU,ボタン,表示装置,計算ソフト)から出来ています。Windowsにも電卓アプリが入っています。電卓を忠実に真似したアプリです。高機能なパソコンで不便な電卓を擬態するのです。これは有能な人材・機材が、保守的で伝統的な仕事方法を強制されて、低能化しているIT後進国を連想します。

私は2011年に「計算メモ」という、数式計算のソフトを作成して公開しています。当初クリップボードにコピーした文字列を、貼り付ける前に変換するためのソフトの計算機能を主体に作り変えたものです。この計算ソフトを私自身使う機会はあまりないのですが、先月久しぶりに機能修正の要望メールが届きました。変数に代入する行でも計算値を表示する事、100Aのような入力に対して100×A というように数学的に解釈する事、等の要望でした。そもそもこのソフトでは、中学校で学ぶ数学のように変数が1文字表記と想定してなくて、変数名は単語表記です。ABCはABCであって、A×B×C ではありません。とはいえ要望に沿って変数名の前の数字の間に×を補完することにしました。ついでに ( の手前も×を補完するようにしました。そうすると数学ではなく算数の数式解釈になります。

昔、Web掲示板で 6÷2(1+2) という計算式の答えは、9なのか1なのか、という論争がありました。私は、2という名前の倍数化機能の関数であると解釈できるので答えは1だと感想を書き込みました。すると、高校生にプログラムを教えているという偉そうな先生から、

「正しい答えは9です。君は小学生からやり直しなさい。」 と、説教されました。

今回のソフトの修正で、この問題の計算結果は9になりました。