『 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73《皇帝》より』
〜2月に上記コンサートへ行ってきました。その感想です。〜
彼(辻井さん)の弾く《皇帝》は私が思っていたよりテンポが速く、なめらかな音が次から次へと紡ぎ出されていた。一言で言うと、エレガントだった。
上質なチョコレートが口の中でとろけるような、そんな感覚にも似ていた。
舌の上でチョコレートの味が広がっている時は、それは確かにそこに「ある」のだが、次第にそれは余韻を残しつつも「なくなって」しまう。そんな風に、ピアノの音色は流れているのだが、美や愛や幸福の様に形がないものだから掴みどころがない。
彼の音へのずば抜けたセンスと集中力もさることながら、聴いている側もその音に魅せられ、あっという間に時間は過ぎた。束の間の時間だった。
《皇帝》の中で、私が一番好きなのは第2楽章。
一番思い入れがあるところだが、彼の音色に安心して身を任せると同時に、体の奥の方からじんわりと何かの感覚が広がってきて、涙で目がにじんだ。彼の音楽に最後までついていきたいと思った。
私は、音楽というものを感覚的に聴いているが、彼のベートーヴェン<皇帝>の解釈は
すばらしかった。
こういう生きた音を聴けることに感謝したい。コンサート後、数日間、体の中にその時の音が残っていた。以前から行きたかった辻井さんのコンサートへ、念願叶って行けたことを幸せに思う。(辻井さんとオルフェウス室内管弦楽団との相性もバッチリでした!!)
(サンシャイン)