体験記 (57)
毎日ではないが、ぐずぐず言いながらも生活しており、翌年は息子が生まれた。娘同様名の光の家へ行くと、(裕喜)がいいですよと言われ、それに決めた。
自分で決めるのでなく、どこまでも人に決めてもらう生活だったと今に思う。自主性がなかったのである。
その息子が初めての冬に熱を出した。家内が息子を抱いていると、急に「裕喜が死ぬ 裕喜が死ぬ」と言い出すので驚いて起きると、白目をむいていた。引きつけをおこしたらしく、あわてて救急車を呼んで病院へ行った。病院では風邪の熱の為とのことであったが、私も一緒に救急車に乗ってしまったので、帰りの足がなくなり、タクシーを呼んだが全部出てしまっていて何時になるか分からないとのことだった。生まれて初めて救急車を呼んだので、帰りの事は全く考えてなく、一緒に車に乗ったのがまずかった。夜中の1時頃だったのでいつ迄も病院にいては病院も困るので、父に電話をして、自転車で来てもらい、その自転車で私が家へ帰って、車を持ってきて家族を連れて帰ることにした。
病院の場所が変わっているので、父が間違ったら困るので近くの交差点で父を待っていると、スーッとパトカーが近づいて、2人の警察官が降りてきて「こんばんは、どうしたんですか?」と聞いてきた。子供が引き付けをおこして、救急車で来たけれど帰りの足がなくなり父を待っている旨を話すと、「タクシーがあるでしょう」と言うので「タクシーは全部出ていて、何時になるか分からんとの事なので父を呼んだんです」と言うと「そうですか、気を付けて帰って下さいよ」と言ってその場を離れた。しかし警察は私の言う事を信用していなかった。帰ったと思ったら近くのパチンコ屋の駐車場へ入って行きライトを消した。あそこで私を見張っているのだということはすぐ分かる。しばらくして父が自転車でやってきたので、父を病院へ入れて待ってもらうことにした。病院の入口でパトカーが気になり振り向くとやっと私の言う事を信用したのかライトを付けて何処かへ走り去って行くのが見えた。悪い事する人間が本当の事言うはずないから、疑うのが警察の仕事だが、これが職務質問かと思った。夜中の1時頃人っ子一人いない交差点でポツンと立っていれば怪しまれても仕方がない。これまた生まれて初めて受けた職務質問であった。
執筆 :(T.Y)