体験記 (48)
薬剤師から「近くの病院じゃ知った人に会うと困るでしょう。高松に磯島クリニックというのがあるので行ってみたらどうですか」と言って場所を教えてくれた。どうしようかと考えたが、一度行ってみようと思い瓦町にあったクリニックを受診してみた。先生は神経症とはこんなものだぞと、とらわれるカラクリを教えてくれた。18歳の時から本を読んで少しは知っているが、感情のままにクヨクヨと悩んでいたのである。先生は自立訓練を教えてくれた。これは、自分で自分に暗示を与える自己催眠である。
先生が実際にやってみせてくれて、後は診察の度に教えてくれるのだが、なかなかできなかった。しかし1〜2ヶ月する内にコツが分ってきてだんだん腕が重たくなり次に足が重たくなってきた。次に温感に入ってそこまではできたが、それ以上は進まなかった。しかしこの重感と温感は、すぐできるようになり、調子のいい日には両手両足の感覚がなくなってダルマさんのようになったが、どうしてもそれ以上には進まなかった。いくら教えられてもできなかった。後年知ったのだが私のような対人恐怖の人は理屈っぽく素直じゃないからうまくできないのだと分かった。森田療法でも素直な人程治りが早いという。強迫タイプの人は完全欲が強すぎるので、うまくできないらしい。上手になって瞑想訓練にまでいくと心身ともに爽快になるらしいが、私はできなかった。
診察を受けながら、先生から「生活の発見会というのがあって高松では精神衛生センターで月一回木曜日に行なっているから行って森田理論を学ぶように」と言われた。
高松集談会として磯島先生が、数人の患者さんと一緒に立ち上げたとのことだった。木曜日は磯島クリニックが休診日だったので先生も毎回出席してくれて皆の悩みを聞いてくれてアドバイスしてくれていた。
出席してみて始めて神経症で悩んでいる人々に接して話をするようになり、本に書かれている通りいろんな悩みの内容を知ったのだが、先生の言われるように神経症の悩みは自分が一番苦しく思い他人からみれば私の悩みがバカバカしいのだろうが、私は真剣に悩んでいるとのことであった。
執筆 :(T.Y)