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(o.s)

大 掃 除

 私の家には玄関に薬箱が2つあります。去年までは置き薬は3箱ありました。農協の薬箱は去年撤退してもらいました。何事にも拒否できない軟弱な性格が災いして様々な会社の置き薬が玄関に鎮座することになってしまいました。しかし私は絆創膏しか使ったことがありません。薬を飲む習慣がありません。
 薬箱の中には正露丸があります。正露丸は、もともとは「征露丸」と言っていて、露西亜(ロシア)をやっつけて征伐してやるぞというスローガンが籠っています。怪しい薬です。皮膚に触れると石鹸で洗い流す必要のある物騒な薬です。悪玉菌も善玉菌もみな殺しの消毒薬です。消毒薬というのはそれ自身が毒なので微生物を殺します。征露丸には神経麻痺作用もあって腹痛も無くなり下痢も収まるらしいのです。下痢が収まると腹の中には良くないものが停滞しますが、思う存分に戦争が出来ます。陸軍の森鴎外が空想上の脚気菌を成敗するために配布したらしいのです。
 私は、今年2月に風邪になりました。一週間で治ってしばらくすると、また感染しました。体質が悪化しているようなので反省しました。食べ過ぎと運動不足が良くないと考えました。人からも薦められた散歩は大儀にもかかわらず無意義に思えたので、有意義な掃除をすることにしました。風邪は体内の大掃除だと言う人もいます。毎日、毎日、大掃除をし続けました。数十年間の無用の長物が山のように鎮座していました。合計すると燃えるゴミ大袋が20個。燃えないゴミが買い物袋16個、段ボール箱を分解して束ねて16束でした。段ボール箱は、いつか役に立つこともあるだろうと無思慮に部屋に投げ込まれて放置していました。段ボールのテープを剥いだりホッチキス針を除去したり切り裂いたりと必要以上に丁寧な作業をしました。運動目的だから効率悪くても良いのです。改めて、段ボールの優れた所、すなわち、簡単に分解して捨ててしまえる事を実感しました。これが、大きくて丈夫で立派なプラスチック製の箱だと、裁断してゴミ袋に入れるのが大変です。段ボールは畳んで仕舞って置けます。最近は、綺麗な段ボール箱が家庭用品店で安く売っています。状況に応じて臨機応変に柔軟な起動性を発揮します。
 パソコンの仮想的整理箱であるフォルダはさらに簡単に作成消去ができて移動も複写も楽です。捨てられない雑誌の切取りはデジカメで取り込むことにしました。思い出があって、なかなか捨てられなかつた記念物は写真に撮ってから捨てることにしました。
 寝室は、雨戸を閉め何時でも好きなときに寝られるように年中暗くしていたのですが、雨戸を開け放ち、ガラスを磨き、風通しをよくして、掃除をしました。窓の外は春のはじまりでした。