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映画紹介 (by T・T)

題名:ペイ・フォワード(Pay it Forward)  (1948伊)

 今回は真面目に内容のある映画を紹介いたしましょう。最初映画館でこれを見た時は、いい子ぶった映画だな、と思ったのですが。はじまりはいきなり人質を取って立てこもり、パトカーが来ている事件現場に聞き付けた記者が来て、何ごとか、と思わされます。ここでヒーローアクションなら主人公が現れカッコよく解決してキャラ説明、なんだけど、そういう映画ではありません。
 さて主な登場人物は、アルコール依存から回復途中の女性(ヘレン・ハント)、その息子でミドル・スクールに通う男の子(ハーレイ・ジョエル・オスメント)、そして男性教師(ケビン・スペイシー)。この三人の話と記者の話が別々に時間と場所を変え説明されてゆき、ひとつにつながる。

  酒を飲みたくなって隠している酒をさがすところや、酒を流しに捨てるところは、アルコール家庭にはおなじみの光景?
 ミドル・スクールで生徒に教師が課題を出す。「どうやったら世界を変えることができるか、実行してみよう。」男の子はホームレスを家に泊め・・・。13分目で音楽とキャストのクレジットが現れるのもいい。
 脚本もディテール(細かいところ)もリアルでよくできていて、何回見ても発見があります。※課題の相手を教師に決めた男の子が教師食堂に行き、男性教師に手紙を渡したあと、ちょっと出口とは反対の方向へ歩いてから反転して出口に向かう。※妻に暴力を振るい、行方を知らさずに家を出ていた男の子の父親(妻と同じくアルコール依存から回復中)が帰ってきて、車がないのを仕事をしない言いわけにするところ。※顔にやけどの跡があるのをどうしたのか?と男の子に聞かれた男性教師が、後ろでたむろしているクラスメイト達がこちらを見るや、男の子がクラスの中でその質問をする役・貧乏くじが当たったんだな、と推察するところ。とか。
 男性教師もまた、機能不全家庭で育っていたことがわかります。映画を見直すと、彼の行動パターンが納得できます。相手の言ったことを自分に否定的に受け取る。相手(主に女性)は「そういう意味じゃない。」と自分の意図を説明しなおさなければならない。すべて自分で管理できる、決まった毎日のスケジュールの中で過ごし、自分の言葉ですべて説明できる範囲の中だけで生きて安心してきた教師。それは彼が何が起きるかわからない場所で育ったためなのでしょうか?男の子が抱える問題は実は男性教師の過去と共通するから、共鳴しあう(ひかれあう)のは不思議はないのかも。そして男の子の母親とも。この映画は、回復途中にある大人どうしの恋愛が持つ問題も表現していて、時に笑え、時に考えさせられます。ちょっといい事が起きたあとはそうでない事が起こる。あざなえる人生の綾(あや)。
 変化・CHANGEを恐れる人々。そしてCHANGE・変えることを生徒に課題として出した男性教師自身が実は変化を恐れていた・・・。
 最初の授業で教師が男の子に「世界が君に期待することは何?」と聞きますが、ひきこもりだった私だったらこう答えるでしょうね。「取り換え可能な歯車として機能すること。」と。
あとひとつ映画を見ていておもしろいのは、善意を受け取った人の反応。自分のためにしてもらったのに、相手の真意がわからずに雑言を言ったりして。
 精神年齢が小学校高学年以上の人なら見てわかると思います。
〜おまけ〜
 ※ようやく見た「世界の中心で愛をさけぶ」泣かせるツボをついてくるー。私は婚姻届で泣かされました。柴崎コウの立場が、ない。※ようやく見た「ロード・オブ・ザ・リング第一作」敵の恐ろしさより、世界を暗黒から救う指輪が持つ力によって味方の側の者さえひきこまれる、その依存症的な恐ろしさ。これにつきるですね。以上です。

by T・T