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2015春の出来事

 先月、刑事がやって来た。兄のことを根堀葉堀り聞く。何をしでかしたのだろうか? ドラム缶でも かっぱらったのか? 兄嫁の事とか聞かれる。私は兄嫁とは10年以上は会っていない。私は兄とも全然話をしないので、事情が全くわからない。刑事が帰って、しばらくすると、兄の勤めている会社から電話がかかってきた。兄の居場所を聞かれる。私は兄の勤務する会社さえ初めて知るというのに、どこに雲隠れしているかなんて知らない。その電話で、兄嫁がどうも亡くなったらしいことを知る。何やら状況がTVニュース的な、怪しい雲行きである。
 私が現在住んでいる家は、母屋(4LDK)に隣接する3LDKの住まいである。母さんが夜なべ内職して約40年前に建てた家であり、元々は兄が帰省後から住んでいて結婚後もここに住む予定であった。しかしながら新婦がなんだかんだと難癖をつけた結果、父は兄夫婦のために同町内に新居を建てた。
 夕方になると、兄がやって来た。別居して実家に居た兄嫁が50日前ぐらいに孤独死していたらしい。司法解剖の後、葬式をするのであるが、東京に住んでいる娘の居場所が分からないから、私にパソコンを駆使して何とかしろと指令した。兄は、嫁ばかりか娘にも嫌われていたらしく連絡先を教えてもらっていなかったのだ。
 兄は父のように酒も飲まないし、暴力もふるわないし働き者であったが、見た目がむさ苦しく口調もぞんざいであった。兄嫁は結婚後、兄の職歴が立派ではなかったし結婚相手の家の格も実家に比べて低いことに気がついて、周りに強制されて騙されて見合い結婚をしてしまったと、恨みっぽく人生を嘆いていたのだった。
 翌日の夕方にまたやって来た兄から兄の家の掃除を頼まれた。30年前に一度、兄の家に行ったきりなので私は興味津津であった。行って見ると驚いたことに兄は家のすぐ側でゴミを燃やしていた。たぶん兄は家族の温もりを象徴する炎が好きなのだろう。兄が熱心に作った温室は、試行錯誤の様々なストーブで埋め尽くされてはいたが、煤で薄暗く、きっと植物も逃げ出したくなるような有り様であった。
 娘が帰って来た時に彼女の部屋に入れるように、ドアの前を塞ぐ大量の物を別の場所に移動するようにと、大きな袋と空ケースを渡された。私は市のゴミ袋を買ってきてから分類を始めた。渾然と積み上げられた物の中には明白にゴミだと分かる物、私には判断できない書類、雑誌、新聞、衣類、多数の散在する靴下、開封した米袋、得体の知れないゼリー状の物質、未使用なのに何故か凹んでいるペプシコーラ、豪華な美術書・・・これらを大雑把に分類し、これまた悲惨な台所に押し込んだ後に、階段を通って玄関までの塵芥を掃除したのであった。

(os)