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自己表現トレーニングの考え方

  私の「私に対する態度」 自己評価のワークシート  
まず初めに、今のあなたの状態をもう一度振り返ってみましょう。あなたは自分のことが好きですか? 毎日の生活の中で自分のあり方に満足していますか?自分を大切にするということはどういうことでしょう?
 日頃の自分を思い出しながら次の文を読んで今の自分にあてはまると思うもの(その文章の一部分ではなく、全体が当てはまると思ったとき)があれば1から30の文のすぐ右の枠内に○をしてください。今はそうではないけれど、そうなりたいと思うものがあれば◎をつけてみて下さい。○と◎が重ならなければいくつつけてもかまいません。

1. 人から何か頼まれると、困るときでもイヤと言えず、あとで後悔する
2. 自分のできることを人に伝えたり、自分の能力を使って何かするのが好き
3. 腹が立つことがあったら、感情的になることはあっても、相手に伝えようとする
4. 困ったことが起こると、オロオロしてしまい、自分で何かするより人に頼りがち
5. 買い物・映画・旅行など、気が向けば一人で行くし、一人で外食することもある
6. 気のおけない仲間とならよくおしゃべりするが、改まったところでは黙っている
7. イヤな人・嫌いな人の顔を見られないし、そんな場には行かないようにする
8. 人にものを頼まれたり、聞かれたりしても、できないことは、断ったり、知らないと言える
9. 何かをやり始める時、「きちんとできないのならやめておこう」と思うことが多い
10. 嫌なこと・腹の立つことがあっても、自分さえ我慢すれば丸くおさまる時は、そうする
11. 時とともに自分の考えや態度が変わることもあるが、自分なりに納得できている
12. 自分の言うことやすることに対して、人が賛成してくれるかどうか気になる
13. 仕事や家族のグチは、親しい友人にも言わないようにする
14. 自分が人と違っていてもいいと思うし、違っていても気にならない
15. 自分のやりたいことがあった時、人を誘って一緒にやろうとすることが多い
16. 自分の意見を聞かれて因ることが多いし、思うことがあっても人に聞いてから言う
17. 嫌なこと、困ったことが起こった時、逃げないでどうすればいいか考える
18. 職場や近所で不満がある時、当人には直接言わず、他の人にグチを言う
19. 家族のキゲンが悪くなることや、子どもが嫌がることは、自分がしたくてもあきらめる
20. 自分の欠点や弱みを指摘されたら認めるし、失敗した時は責任をとるようにする
21. 人の役に立ってあげたり、人の世話をするのは好きだが、ナマイキ・エエカッコシイと言われたくない
22. 失敗したり、嫌なことがあった時は、自分を責め、忘れようとしてもつい落ち込む
23. 好きでない人、気の合わない人とも一緒に仕事をしたり、活動したりできる
24. 自分と違う意見の人や、やり方の違う人と何かする時、妥協しないで自分のやり方を通す
25. 人にものを頼んだりするのはニガ手だし、わからないことを聞くのもはずかしい
26. やりたいこと、ほしいものなどがあれば、自分で計画を立て実行に移していく
27. 外で嫌なことがあると、つい家族や親しい人に八つ当たりしてしまう
28. 自分の好きなことのためにお金を使うのは、うしろめたいと思う
29. その時々の自分の気持ち・体調などによく気づいていて、それに応じて動ける
30. 自分の意見や要望をストレートに言えるが、思いどおりにならないと落ち込む

記入し終ったら、一番右の枠の中に次のとおり、A、B、Cと記入してください。
1-A 2-B 3-C 4-A 5-B 6-C 7-A 8-B 9-C 10-A 11-B
12-C 13-A 14-B 15-C 16-A 17-B 18-C 19-A 20-B 21-C 22-A
23-B 24-C 25-A 26-B 27-C 28-A 29-B 30-C
次に、あなたが記入した○と◎を、A、B、Cに分けて合計数を数え、次に記入してください。

○の数 A( ) B( ) C( )    ◎の数 A( ) B( ) C( )

 Aは、非常に消極的で、自分の気持ちをコントロールすることや自己表現ができない人、受け身な態度で、すぐに自分が犠牲になってしまうような人がとりがちな行動や感じることです。
 Bは、精神的な自立、自己表現ができていて、積極的に自分を生かしていこうという態度です。
 Cは、自分自身は自己表現をしたいし積極的になりたいのに、まだそれが身についていなかったり、やり方がわからなくてうまくいっていないときの状態です。
 自己評価の結果、Aの数が多ければ、「自己表現ができていないんだな」、Bが多ければ「結構できているな」と考えて下さい。Cは「私は努力中、現在進行形」だと、自分を見てもらえばいいと思います。
◎は、自分がどうなりたいかということですから、もしAにたくさん◎があるとすれば、そんなあなたは自己表現をしたくないということです。でも本当にそれでいいのでしょうか?
  
Bに◎が多かったあなたは、自己表現トレーニングに興味があるはずです。
◎について言うと、たとえば (21)人の役に立ってあげたり、人の世話をするのは好きだが、ナマイキ.エエカッコシイと言われたくない」に◎をつける人も、少なくありません。でも、それは無理というもの。時にはうまくいく場合もありますが、そもそもこれは「ない物ねだり」です。自分がやりたいことをやったとき、それをよしと思わない人が出てくるのはありがちなことで、そういうものだと、割り切っていくしかありません。
 (20)に◎をつけた人も、中にはいるかもしれませんね。嫌なことがあったとき、自分の中に閉じこもって、その結果自殺してしまうよりは、八つ当たりでもするほうがまだましかもしれません。不満をぶつけるべき対象はズレているけれど、嫌な気持ち、屈折した気持ちはちゃんと外へ出せているわけですから。しかし、まわりから見ると確かにハタ迷惑です。
 嫌なことは、もしその対象に言えることなら言えばいい。言えないことは割り切って、関係のない人に八つ当たりをしないですむようになれるといいですね。

 Cの項目には多くの女性が○をつけます。一歩は踏み出しているけれど、まだちょっと訓練不足、というのがCの項目です。少し詳しくみていきましょう。
 (3)は、腹の立つことがあるとき、相手に伝えようとするところはいいのです。ただ、感情的になってしまうと、ちゃんとした自己表現にならず、相手に伝わりにくいのです。感情的にならないで伝えることもできるはず。そういう訓練をしていくといいのではないかと思います。
 (6)は、自分の考えや気持ちを人に伝えたいとは思っているわけですね。だから気のおけない間では話がはずむのでしょう。けれども、「気のおけない」というのは、実は、相手の評価が気にならないということなのです。改まった場所では、自分がどんなふうに人から見られるかということを気にしてしまうから、黙ってしまう。
人が自分をどう見ているかに気づくことは大事ですが、それを気にするかどうかはまた別の問題です。たとえ人から悪く思われても、言うべきことはきちんと言う。そんなふうに、「気がついていても気にしない」行動をとることはできるわけです。   
 (9)も、よくあることです。やりたいと思い、やろうとはするのですが途中で挫折したり、やる直前になってやめたり、人に何か言われてやめたりというようなパターン。「どうせやるのなら、ちゃんとやれ」というようなことを言われたりするのですね。ちゃんとやれるかどうかは、やってみないとわからないのに、そこで引き下がってしまう。というのが、まだCの段階です。
 (18)(6)とほぼ同じです。
 (16)は、やりたいことがあるのなら小人でもやればいいのに、人を誘わないとできない。逆に言うと、自分はやりたいんだと思い、その気持ちを自分で受け止めてもいるけれど、「人を誘わないとできない」と言うことで、現実には何も行動に移せていない。それが問題です。
(18)について。心の中に不満があるとき、それをずっと持ちこたえるのはシンドイものです。グチってこぼすことそのものは、悪いことではありません。ただ、グチだけでは、当の不満な状況、不満な関係は決して変わりません。
 カウンセリングでは、最初はグチも聞く必要があるのですが、グチを聞くことだけに終始してしまったのでは単にガス抜きをしているだけで、本人を取り巻く状況も関係も、少しも変わりません。
少しずつ本人に力をつけてもらい、ある時点で不満に思っている状況に自分が働きかけるようになることが大切です。グチをこぼせるだけ、少しは表現ができているから心の中に不快なものがたまっていかない。その意味ではいいのですが、状況はそれでは変わらないということです。
 (14)の場合、逆に相手の言いなりになるのであれば、Aになります。妥協しないで自分のやり方を通すというのは、二つの点で問題です。
 ひとつは、多くの場合、それは妥協しないのではなく、できないのです。妥協できないというのは今までが我慢しすぎていて、もうこれだけは妥協できないというふうに、今までの我慢の裏返しとして出てしまう場合です。
 たとえば年を取った女性が、これまでは何でも周囲の言うことをきいていたのに、急に「仏壇のことだけは、私の思いを通させてもらいます」とか、「お墓のことだけは」と言い張る。確かにお墓や仏壇という当人にとっても大事な事柄だからということもあるのでしょうが、もう一方では、今まで自分の言いたいことも抑えて我慢してきたから、何が何でもこれだけは、という気持ちになるところがあるのではないでしょうか。
 こんなふうに、ずっと我慢を続けていたのが限界に来て、一種キレるような形で自分の主張を通そうとする、というような場合があります。
 もうひとつ、妥協しながら相手との関係を調整していくというのはかかなり円熟した能力だと言えます。ですから、自分の主張をまっすぐに言い通すことしか自分の出し方を知らない、というような場合も少なくないのです。もう少し訓練が必要なのですね。
 先の話とつながってくるのですが、長い間我慢をし続けてきた人が初めて何かをやり出したときには、こうなることが多いのです。大きな話になりますが、ウィメンズ・リブやフェミニズムの主張に対して、「この頃の女は何でもかでも文句を言う」とか、「ヒステリックでうるさい」というような男社会の反応があります。そう言いたくなるような一面も否定できないのですが、ではなぜそうなるかと言えば、これまでにさんざんたまってきたものがあるからです。 ・
 最初から成熟したものの言い方は、なかなかできないものです。けれど実社会では妥協ができないと、どんな主張も通りにくくなります。オールorナッシングではありませんが、今までずっとゼロで我慢してきたのだから今度は100%を、と言っても、それは通りません。ゼロよりは30%がいい。
100%が通らなかったら70%で我慢するというようなことができるようにならない
と、自己表現は難しいのです。
 (19)では、「ストレートに言える」というところまではいいのですが、「思いどおりにならないと落ち込む」というのは、まだ引きずっているものがあるのです。今までずっと、思いどおりにならなくて落ち込んできた。だから今度は私の思いどおりになっていいはずだ、なるべきだというような思いがあったりします。
 ものごとが思いどおりにならないと、不都合には思うかもしれませんが、何も落ち込む必要はありません。世の中って思いどおりにならないな。人間って私が思うようには動いてくれないな。こう思っていれはいいのです。
 想いどおりにならないときには、次善の策、次の手をどこまで自分で考えつくか。これがだめだったら、こういうふうにしようということがあれば、落ち込んでいるヒマはないものです。きびしい言い方をすれば、落ち込むというのは、次善の策を考えないための作業なのかもしれません。